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第十四回 業務システム構築において経営者が押さえるべきポイント

2019.02.25


 小さく初めて大きく育てる 経営者が押さえるべき3つのポイント

 2年間にわたりお伝えしてきたFileMaker連載、今回が一区切りとなります。
(前回の連載内容はこちら

近年、ITコーディネータとして、FileMakerを活用して業務システムを構築する中小企業経営者のご支援をさせていただく機会が多くなってきました。

希望される企業のほとんどが、自社のシステムは、自社で把握し、運用したい(しかし、初動は自分達だけでは整理できないので専門家に支援依頼し立上げたい)との意向を持たれています。

FileMaker社で定期的に開催されているステップ別の研修にITに強い(ロジカル思考のできる)若い社員を受講させ、導入後の運用も自分たちである程度できるよう、計画的にIT人材を育成される経営者も増えてきました。

最近の若い方は生まれた時にはすでにパソコンがあり、IT業界と関係なくてもスマホやインターネットなどを見ており、自然とITの必要性がわかっています。FileMakerの学習も技術習得のスピードが速く、訪問するたびに「現場からこんな要望があり、ここまで作りました」と新作が生まれている企業もあります。

これはFileMaker(ITの)活用として、たいへん良い流れですが、経営者の方には次のステップとして押さえてほしいポイントがあります。

■1■ 社内のIT化を担当者任せにしない

IT化を担当者任せにして泣きを見る。というケースは、FileMakerに限らずたいへん多い例です。

私たちも「システムを作っていた社員が辞めてしまいどうにもならない」という理由で支援依頼を受けることがありますが、社内の誰一人把握している方がおらず、ドキュメントは皆無・管理者用のID/パスワードもわからないことがあります。

仮に中味が見ることができても複雑に絡まっていて手のつけようが無く、結局最初から作り直し、というパターンが多くあります。

これは担当者というよりも、「ITが苦手(できれば見たくない)」という経営者の怠慢です。ひとりの担当者が作れるとわかったら、まるで教育費用含め元を取るぞと言わんばかりに「あれもこれも」とシステムに組み込ませようとするケースも見られます。

担当者は元々ITの専門家ではありませんので、途中までは社長の期待に沿えるよう懸命に作り込みますが、ある時破綻し、追い詰められ苦しくなって(半ば切れ気味で)退職してしまったため連絡も取れないという例も少なくありません。

最低限の管理情報含むドキュメントは最初に作成し、社内システムは、メインとサブ(サブが居なければ社長自ら、または信頼できる外部支援者)の最低二人は用意し、リスク回避ができる状態にしましょう。

■2■ 戦略(目的)の優先順位とIT化する範囲(順番)の足並みを揃える

先日、レジが壊れて、せっかくだから今どきの新しいレジを入れたいと探されている会社がありました。
ある高額なPOSレジを入れると在庫管理が完璧にできると販売業者から言われ、導入しようか悩んでおられました。

「いま在庫管理で困っているのですか?」と伺うと、さほど困ってないし、仮に管理できたとしても現状仕入れ先との1回当たりの仕入れ数の取決めがあり、その分析結果で仕入れを調整できるかと言えば、そう簡単な話でない。それに商品管理するためには、全部の商品にバーコードを振る必要があり、商品登録すらできるかどうか。

 ということで、「それは悩む必要はないでしょう。IT化が目的ではないから効果は期待できないので導入の必要ないと思います」とアドバイスしました。

先の担当者任せにしない、という話にも通じますが、IT化を他人任せにすると、経営者が思っても見ないところで、悪気なく多くの時間(人件費)を費やしていることがあります。定期的に確認し、「そこは無理にIT化せず、運用で回そう」と決断することも大事な仕事です。

実際、それでも業務は十分回るケースが多々あります。

今の時代、いろいろなところから最新の情報は入ってきますが、特に中小企業は全部やろうと思っても体力がついて行きません。

まわりに惑わされることなく、自社の戦略をしっかりとブレイクダウン・優先順位化し、IT化も目的に沿った効率的な投資になるかを基準に判断を行っていきましょう。

■3■ IT化を円滑に推進するための社内コミュニケーション

社内IT化・活用を進めるにあたっての抵抗勢力として、とても残念ですが「IT化すると自分の仕事が減るのではないか」「これまでの自分が築きあげてきた存在価値が無くなるのではないか」と心配する社員が歴史がある企業であればあるほどおられます。

そして厄介なことに、表面上は賛成しつつ、裏からいろいろな手を使い、現状を維持しようとします。
 「そんな後ろ向きな社員など無視してどんどん推進したい」と成長を目指す経営者であれば皆そう思います。

しかし、ちょっと立ち止まってみましょう。その社員は、現状業務の「要(かなめ)」の部分をにぎっているもので、進みかけていた業務改善も忙しさに紛れ、うやむやになってしまうことも少なくありません。

 これまでご支援してきた中でこうした事態を乗り越え、ステップアップできた企業は、
 1.定期的に社員(各業務のキーマン)との戦略会議を持ち、(テーマにIT活用も加え)それぞれに自社を改善する施策を作成させ、発表させている。
 2.経営者自身が「必ず企業を成長させて社員とその家族を幸せにする」、そのためにはIT活用も必要であるというぶれない姿勢を常に保ち、自身も学び成長し続けている。

 という2点が共通点としてあげられます。

後半、FileMakerやITから話が離れましたが、経営とITは両輪です。FileMakerはあくまで1つの活用ツール(例)であり、連載を通じて、中小企業のIT活用の考え方をお伝えするための手段として取り上げさせていただきました。

ぜひ御社の状況や課題解決のヒントにしていただければ幸いです。

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