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「売るもの」を変えたふとん店―ネット活用、その前に<IT活用事例>

京都八田屋 代表取締役社長 八田道明氏(左)、IT経営コンサルタント 坂田岳史氏(右)

2016年秋号 2017.01.03


低価格競争下のふとん店が、 眠りの悩み解決店として甦る!

人々の生活様式が変わるに伴い、総需要が縮小する産業がある。

たとえば和室が減少すると影響を受けるのは、畳や建具、和家具、そしてふとんであろう。

洋室・ベットの普及で、新生活のスタート=ふとんの購入 という図式は崩れ、さらに量販店など低価格を打ち出す店が顧客を奪っていく。
地域に根を下ろすふとん店の選択肢としては

 ①既存顧客を大切に、できるところまで細々と続ける
 ②営業・販促を強化して小さくなる市場で少しでも顧客を増やす
 ③新商品を開発し、新しい需要を開拓する
 ④強みを生かして近い領域で事業転換する
 ⑤撤退、もしくは新規事業を立ち上げる

などが挙げられる。
自社がその立場になったら、どうするだろうか。

明治35年創業の京都のふとん店・八田屋では、4代目経営者の八田道明社長が強みを活かしつつ、事業コンセプトを転換。ネットの活用と合わせて、新需要の開拓に挑んでいる。

同社の歩みを、2016年9月17日に京都にて開催された「中小企業診断士近畿ブロック スキルアップ研修会」での講演ならびに八田社長への取材をもとに紹介する。

中小企業診断士近畿ブロック研修会での八田社長講演風景(2016年9月17日)

中小企業診断士近畿ブロック研修会での八田社長講演風景(2016年9月17日)

会社名 株式会社 京都八田屋
所在地 京都府京都市下京区河原町通り
高辻上ル富永町361
設立 2006年(創業:1902年)
従業員数 4名
事業内容 枕、ベッド、布団等シングの企画販売
URL http://www.hachidaya.co.jp/

 

オーダーメイド枕への挑戦、さらなる集客に課題

ベッドで寝る人が増えた現状を受け、八田社長はまず、ふとんにこだわることをやめ、商材を寝具全体とした。

睡眠について勉強してカウンセリングができるレベルの知識を習得。10年間調節無料のオーダーメイド枕に力を入れた。
1商品当たりの利益率は向上した。

ただ、なかなか来店者数が伸びないのだ。新聞広告を出してはみたものの経費を圧迫し始めた。
もっともっとネット活用をして集客するには、どうすればよいのか。

「売上を上げたい」「ホームページを強くしたい」と策を練っていた八田社長は、会長である父が参加したセミナーの講師を務めたIT経営コンサルタントの坂田岳史氏に相談する機会を得る。

当時、オーダーメイド枕は、まだまだ市場の認知が低かった。これをどう認知してもらって来店を増やすか。
坂田氏は、八田社長にヒヤリングを重ね、同社が顧客に提供する価値に着眼した。

 「八田屋さんが顧客に提供している価値は何か。
寝具を売るというより、よく眠れる環境をつくっている
=つまり、眠りの悩みを解決する店ではないか」(坂田氏)

オーダーメイド枕はよく眠れるための道具。枕という手段のその先に、快適な眠りを提供しているのだ。

ここで発想を転換
物を売る店から、八田社長の睡眠に関する知識を活かした「眠りのソリューション専門店」への挑戦が始まった。

八田社長は「眠りの悩みを解決する眠りのプロ」ベッドマイスターとして顧客の悩みを聞き、それぞれの顧客に最適な寝具の提案を行っていくことにした。

 

「何をする店か」を明確にし、顧客の悩み事をキーワードに

では、「眠りの悩みを解決」する価値をどうやって提供するか。ネットで要望を聞きネット販売するか、来店してもらうのか。同社では一人ひとりの眠りの悩みを聞くことを重視し、来店型を選択。
「よく眠れない」「寝ると腰が痛い」など睡眠に関して悩んでいる顧客がネットで同社を見つけ、来店してもらうステップを考えた。

つまり、Webサイトの役割は集客(来店誘導)である。
地名や、枕、ベッド、などの直接的なキーワードに加え、「肩こり」「首こり」「腰痛」などの悩みを意識したSEO対策(検索エンジンで上位に表示されるための対策)を行った。

 

京都八田屋のホームページ http://www.hachidaya.co.jp/

京都八田屋のホームページ
http://www.hachidaya.co.jp/

 

八田社長一人で店舗運営とWeb更新をするのは大変だったが、専任スタッフを入れてコンテンツを改変した結果、一カ月ほどすると来店客が急増。

売上は対前年比50%近く上昇し、客単価もアップした。
京都という土地柄、観光を兼ねて北海道や沖縄からの来店もあるという。
以前は50代〜70代の女性が主な顧客であったが、若い男女、特にふとん店には縁遠かった30代の男性が増えているのが特徴だ。

現在の集客手段はほぼ100 %、 ホームページである。

睡眠の悩みを解決する、という顧客価値を見出したことで、「顧客が探してたどり着く」Webサイトにすることができた。

ネット活用のその前に、事業コンセプトを練ることの重要性が認識できる取り組みといえる。

八田社長はさらに睡眠についての勉強を続け、顧客の期待に応えていく。

 

●専門家紹介

IT経営コンサルタント ダイコンサルティング 代表 坂田岳史氏
(中小企業診断士、ITコーディネータ)
http://itconsul.biz/

京都を中心に関西地区で活躍する専門家。支援実績が豊富で、「中小企業IT経営力大賞」受賞企業を複数支援している。
京都八田屋の支援事例は、平成28年度の「中小企業における中小企業診断士活用事例に見る成功の秘訣」に採用された。


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